Wacomから液晶タブレットの新機種、Cintiq12wxが発売された。
http://cintiq.jp/product/cintiq12.html
数ヶ月前、友達の家で初めてさわらせてもらった液タブ。以来すっかり惚れ込んでずーっと欲しがっていたんだけど、その価格と本体の大きさがネックで買うのをためらっていた。そんな矢先の新機種発表。薄くて小さいらしい!。こういうタイミングに私は弱くて勢いで購入してしまうのだ。(そして変なものを買ってしまうことが多い。果たして今回はどうなるかw)
sofmapの通販でワイド保証付けて14万7千円。10%ポイントバック。発売日の翌日、11/17に到着した。
コンセプトとしてはタブレットPCの液晶部分だけを取り出したような商品。設置した印象は板タブレット、intuosの600ワイドサイズそのもので、凄く薄い。にもかかわらず描画するところに映像が映っているのだ。コレはいいな、思わず笑みが。
届いたー。本体も小さいので箱も小さめ。箱はintuos3の900サイズと同じ感じ。
映像はPCのアナログ出力に接続。マルチモニタになった。タブレット機能はUSB接続。電源・映像・USBの信号は一つのケーブルにまとめられて本体とつながってる。ケーブルの太さはディスプレイケーブルと同じぐらい。細くはないけど、取り回しは悪くない感じ。
付属品。電源や映像コントロールは外部の中継ボックスに集約されてる。
配置方法。今まで板タブレットを置いていたのとほとんど同じ。液タブに角度をつけたほうが書きやすいかな。特にサイドのキーを押す時とか。キーボードをここに置いちゃうと、液タブを回転させるのが面倒になるね。(なので回転はやってないです)ところで翠星石はかわいいね。
サイドキーにはぷっくらシールを貼って押しやすくした。実はこれまでこのキーを使ったことが無かったのだけど、思うところあって積極的に使うことに。ゲームパッドを持つように握って、親指でキー操作をすると良いのかなあ。上のシールはペンのオンオフでチカチカまぶしいのを隠すためのもの。
描いたモノ:トップのミキ絵、コミトレのカットとか。
http://ftmm.jpn.org/img/071120_miki-luminousftmm.png
http://ftmm.jpn.org/circle/0711_comictreasure11cut.png
取り回し快適!ハードウェアのこと
本体が薄くて小さいのは良いね。配置が楽だし、ちょっと動かしたり片づけたりもできる。本体を回転させることが簡単なので、そういう描き方をする人には良いのかな。私は回さない人なのでよくわかりません。
心配した本体の熱さは問題なし。ほとんど熱くない。ちょっと右下のあたりが暖かいかなって程度。冬の場合暖かくてちょうど良いくらいです(笑。
「マッピング画面切り替えスイッチ」という新機能があって、このキーを1度押すと、メインディスプレイの方にカーソルが移る。そして普通の板タブレットのように使うことができるのだ。もう一回押すと液タブの方にカーソルが戻る。これはなかなか便利。液タブで絵を描いているとき、ちょっとOSで他の操作を・・・ってことができる。切り替えが行ったり来たりのトグルなので、気をつけないと今どっちのモードなのか間違えて使うことも。ちなみのこの機能、マルチモニターの環境なら板タブで使えるらしいです。
これで板タブは使う必要が無くなってしまうかも・・。
ペンはintuos3と互換です。なので私は今まで使ってたペンをそのまま使ってる。上の「配置方法」の写真を見たら分かるかな?私はペンのゴムをはずして細いストレートな形状にして使ってます。変だとは思うけど鉛筆に感覚が近くて握りやすいのです。
ペン先は手応えの関係もあってフェルト芯を使用。画面には特にフィルターなど貼ってないです。将来的には何か貼ったり、芯を変えたりしてみたいです。これまで私は芯は標準タイプ、タブレットには紙を貼って描いてました。
映像とタブレット性能
1280x800の解像度。表示領域の寸法は26.1x16.4cm(実測)なので解像度は 125 pixel/inch(以降ppi) 。一般的なディスプレイには90~100ppi のものが多いので、それと比べるとドットが細かい。でも特に細かすぎという印象はないです。というか細かくなって良い感じ!絵を描く道具としてはもっと高精細なものがあってもいいのになあと思うぐらい。
縦に800ドットというのはちょっと狭いかも。致命的ってほどではないかな。ただし、ちゃんと描ける領域はさらに狭いので注意。これについては後述。
友達の家でCintiq21(大きいやつ)を使ったときには、うわーーー!という洞窟を抜けて草原を見たときのような広大感というか快感があったんだけど、それはぜんぜん無いね(笑。ただ、cintiq21よりもドットが細かいがゆえの描きやすさはある。本体サイズの問題もあるし甲乙つけがたい感じか。このドットの細かさで1600x1200とかを出してくればいいのにな。(って書いたらCintiq 20wsxとか新機種の噂が・・・googleキャッシュ)
画面の表面はつや消しタイプ。照明の写り込みは気にならないです。フェルト芯とのセットで摩擦感も程々かなあ。
サンプリングレートは139Hzだった。私はストロークが早いほうなので、サンプリングレートは高い方がよいのです。とりあえず特に遅いという気はしないなあ。ちなみにintuos3の場合200Hzでした。
計測はここのツールを利用:
http://www.sigma-apo.co.jp/front/products/detail/SLCO
描画までの時間のずれ(レンテンシー)は、推定で40msぐらい。これはペンを動かしたときにカーソルが遅れて追いかけてくる感じに見える。個人的にはすぐに順応した。たぶん私は絵を描くときにカーソルは見ていないんだと思う。
計測は、画面の左から右まで1秒でペンを動かしたとき、どのくらいペンとカーソルの位置がずれるか、で推定。左右を1秒で移動させてみたところ、1cmぐらいずれていた。1cm/(26.1cm/1s)なので、レイテンシは0.038s = 約40ms。
色は、まあ、、最近のノートパソコンレベルという感じ。ガンマの調整や白色点はまあまあ。白飛び黒飛びは少なく、グレーが色づいてたりもしない。ただし、RGBの色の範囲が狭く、青の色相はちょっとずれてる気がする。これはあとで測色器を借りてきて測ってみようと思う。
(追加しました:http://ftmm.jpn.org/archives/81.html)
そのせいもあって12wxで色を塗って、普通のディスプレイで見ると色が変。鮮やかというかギラギラになってて色相もずれる感じ。spyderPROとかのキャリブレーション装置を使ったら改善されるかなあ?(難しそう)まあ当面はコミスタなどの白黒原稿や主線デッサンなどに使えればいいと思う。色塗りは今まで通り板タブモードでやろう。
困った!タブレットの位置のずれ
ここまできて最高ベリグーなアイテムに見えるかもだけど、実は結構深刻な問題があった。
部分的に読み取り位置の精度が悪いのだ。もちろんコントロールパネルの調整機能で、精一杯調整した上での話で。精度が悪いというか、なんか変なんだ。
うまく伝わるか分からないけど、ちょっと見てくれ。
中央部では文句なしの性能なのだけど周辺部、特に下部で致命的にずれが生じる。青い線がふにゃふにゃしているのはcintiqの性能そのもので、何度引いてもコレと同じ線が描ける。ふにゃふにゃというのは読み取り位置にずれが生じていることを示していて、ピンクの枠の外側は、全体的に線がグリッド線からずれていることが分かると思う。ドットで言うと最大10pixelぐらい。液タブ上での距離にして1~2mmぐらい。1mm以上ずれると、正直言って描くのはかなり困難。
また、周辺部ではカーソルがプルプル震える。左下と右上で特に顕著なんだけど、これはまあ、この辺の領域で絵を描くことは少ないから問題ないと思う。この領域のアイコンをクリックしたいときはマウスを使えばいいんだし。
ということで、画面の表示は1280x800だけど、まともに線が描ける領域はそれより狭くて、図のピンク色の枠程度になる。絵を描くときはこの領域の中だけで描くようにすればいいのだろう。絵を描くときは全体を見ながら部分を描くものだから、そういう意味では、まあ、描画に使えなくても表示されているだけでも意味はある。
07/11/29追加:
http://ftmm.jpn.org/archives/81.html
位置ズレは、ペンを持つ角度によってずいぶんと深刻さが異なるようです。面に垂直ならズレは少ないみたい。
買い?うーん人それぞれとしか言えない、まとめ
というわけで問題はあるかもだけど、それはそれで液晶タブレットというものの価値はすばらしいと思う。14万円という価格は人によってはかなり厳しいけれど、私個人の感想を言うと、「絵を描いてる」という感じがするのは何物にも代えられない、という感じだ。
私は絵のプロじゃないし、そんなに日常的に絵を描きまくってるわけでもない。娯楽、趣味、としての位置づけになるんだけど、そういう人の方が買いやすいアイテムだと思う。
そう思う理由の一つは、コストパフォーマンスを考えなくて良いから。板タブから乗り換えたとして、差額の14万円をペイするためにどれだけ仕事ができるかなんて分からん。板タブでバリバリ描けている人だと、費用を回収するのはかなり難しいと思う。描いてて楽しい!絵を描きたくなる!というメンタル面での報酬とやる気は、お金換算が難しいところだね。
もう一つの理由は、たまにしか絵を描かないという人ならではのメリット。そもそも板タブレットというのはちょっと不自然なデバイスで、手は机の上に水平に、画面は遠くに垂直に立っていて、それを脳内で対応づけなければならない。絵をちゃんと描けるようになるには、その対応付けがかなり細かい精度で完成される必要があって、それには、相当量の絵を板タブで描く必要があるし、ほぼ毎日のように絵を描いて常に対応関係を調整し続けていないといけない。液タブなら、その対応問題は少なく(無いわけじゃない:画面のガラス分の厚さのずれは人によっては気になるらしい)、たまに描くときに楽に描けるのだし。
というわけで、最初に液タブをさわらせてくれた友達の言葉を引用すると
>シンティク効果で本がどさどさ出るといいですね
だ。厳しいな。おとなしく冬コミの原稿に取りかかろうと思います…。
ねこみ 2007.11.26-05:27 Edit
液タブって、デュアルモニタだと実質使えない。
特に、描画域とパレットを別モニタにする使い方だと。
液タブデュアルつ~のもまた非現実的。
枠が1cmになって、左右下のパームレストが着脱式になれば
なんとかなるかな?
カーソルが震えるのは環境依存っぽいですが、
実際になにがどう影響してるのかはよくわかりません。
同じタブでも処変わればなんの問題もなかったりするので。
書き込みフォームのフォントが激しく見辛いのデスが…?