コミティアに参加してきました。
「おいしい女子のパンの本」は早々に完売しましたが、内容がかなりお気に入りなので増補改訂版として出そうと考えています。はぁパンかわいいです。
ところで今回、有明の開場そばには前日入りして、近隣のホテル、トラスティーというところに泊まりました。ビックサイト開場そばの宿は、ワシントン、サンルートそしてトラスティーと三つとも制覇!しかしこのホテル、会場からもりんかい線の駅からも遠いですね。さらに夜になると近所のコンビニが閉店してかなり寂しくなります。ホテル自体の装備はゴージャスだったのだけどイベント前泊としては向いてないかもです。
以上は余談で、今回の本題は・・
チャリティースケブへの挑戦2
震災後、チャリティー同人誌というのをよく見かけます。個人誌であったり合同企画誌であったりするけど、その売り上げをチャリティーとして義援金にまわしますよ、という点で一致してる。不況の中でも比較的活気のあるオタ産業というか同人誌イベントで、その資金力を少し分けてもらって震災復興に役立ててもらおうって試みでとても素敵だと思う。
自分も何かしたい、でもそんな突発的に本を作れないし、やるなら自分ならではのアイディアで、面白がりながらやりたいと考えていた。
そこで私は前回のイベント(comic1)で料金を取ってスケブを受け付けてみた。スケブというのは、依頼者がスケブや色紙を手渡して、好きな作家さんに絵を描いて貰うというやりとりだけど、立ち位置としてはサイン会と似ている。本を買ってくれた人には無償でサインしちゃいます、それどころかイラストまで描いちゃいますよ、という。同人イベントはそういう文化なのでスケブに対して直接料金を取る人はほとんどいないと思う。
スケブに絵を描かせてもらうこと自体は楽しいのだけど、件数が増えてくるとイベントでの限られた時間が惜しく感じられたり、その期間自分が売り子をできなくなるため誰かに売り子をお願いする必要が出てきてしまう。そんな問題から、スケブは受け付けてません、とか早い者勝ちでn人までです、とか制限を掛けているサークルさんも少なくない。そこで多少は抑止する方法として、料金を取ってはどうかと思った。受け取る金額はチャリティーとして震災義援金に振り込むという名目で。これが裏の目的。
それでcomic1で試してみて気づいたのは、チャリティーという胡散臭さと、「モノ」を買いに来る同人イベントで「サービス」を買うという行為がどうにもスムーズでないことだった。結局はスケブに絵を描いて渡すのだからモノとも言えるけど、スケブ自体は依頼者の所有物なわけで、「モノ」を渡したことに感じられない。
さらにそこで思いついたのが、「スケブ券」というアイディアだった。スケブ券というのは便宜上名前をつけているだけで、義援金を支払った証明書をあらかじめ用意しておいて、それを転売しているようなもの。料金も明らかだし、スケブの件数上限を明示するのにも役立つだろう。
で、やってみた。
■500円 1000円 2000円の3コースを用意しました。
「スケブ内容には差はありません」としても、こうやって並べられると、高い方から買わずにはいられないのか、高い順番に頒布されていった。
スケブの依頼件数を明示する、というのが目的の一つで、つまり今回は三件だけ受けるつもりだった。しかし、別の理由で失敗してしまった。
それはチャリティースケブ受付を12時からと時限指定してしまったこと。時刻になると人が集まりやすいのですよね。開場時には私一人で売り子をしていたのもあって仕方がなかった面もあるのだけど、頒布作業が落ち着いたらとでもしておけば良かった。あるいは時刻ランダムに頒布します、とでもしておくべきだった。時限販売自体が問題かどうかはイベントによるけど、少なくともコミケでは「過度に煽る行為」に当たってしまうそうで、事実上自粛要請されている。
■ジョークとしてスケブ券0円というコースも用意したのに・・・
時限としてしまった故に、あきらかに3人以上の人々が集まってしまい対応できなくなってしまった。
で、結局なし崩し的にできそうな範囲で受け付けてしまった意志の弱い私。
寄付金額は各自お任せでといったら、500~2000円の範囲で合計1万円になりました。あらかじめ入金していた分も含めて13,500円。スケブごとにおおよそ平均1000円の寄付ということになりました。ありがとうございます(ううう)。
後から分かったのだけど、東北で被災した人がスケブ依頼してくれていたらしい(それも二人)。東北新幹線も開通したし、被災者でも本来の生活に戻ってる人も多いだろうからあり得ることなんだけど。被災者が募金するってどういうことなのか頭を悩ませたじゃないですか!(ずんだまんじゅう、萩の月、美味しかったです)。
それと今回も、スカート付箋の売り上げはチャリティー扱いとさせていただきました。
楽しい試みだったけど、いくつか問題点に気づいた。
・募金の券を転売して良いのか
実のところ関連団体にこのような手続きは問題ないのか確認を取ってはいません。あくまでもチャリティースケブの整理券販売、という名目で、その整理券というのは、使用済みの用紙にらくがきをしたものとして渡している。紙にはたまたま額面相当の義援金受付が記載されているし、受け取った人が確定申告時に寄付金控除として使えるかもしれないけどそれは私の知るところではない、というタテマエです。
募金団体である赤十字や中央募金会は見て見ぬふりをしてくれるかもしれないけど、ファミリーマートに対しては別だ。ファミポートのチケッティングシステムを無料で利用していることになるので、よろしくない。募金団体に相談して、細切れの領収証を発行してもらうのが正道かもしれない。可能かな?
・寄付金先払いでいいのか
スケブ券を用意するために、あらかじめ自分が相当金額を振り込む必要がある。これはもし仮に誰もチャリティーに参加してくれなかったら自腹で寄付したことになる。それでいいのか。金額的にたいしたことがなければ寄付自体は自発的に行っても単に募金しただけなので良いことをした、と思えばいいのだし、そもそも同人誌イベントというのは自分が印刷代を支払って本を用意して、それが売れるかどうかは時の運というものだろう。
・スケブ行為の宣伝
スケブ依頼は作家としての評価でもあるので、こういう試みをしたり、それを記事として公開すること自体は、本来避けた方が良い。自らの注目度をアピールしたいのでもないかぎり、チャリティースケブはこっそり会場でやればいいのだ。しかし、受け付けた金額をちゃんと募金しましたよと後でサイトで告知するのがスジだとすると、そのためにはwebで報告記事を書かざる得ない。
そこで、あらかじめ募金しておいて、スケブ券という形で依頼者(募金者)に手渡すのはとてもリーゾナブルな解法だと思う。
・スケブに対する有償化が引き起こす問題
今回はチャリティーという名目だけど、これをキッカケにスケブなどのサービスへの金額づけに慣れてしまうかもしれない。お互いの好意に基づいた行動が、市場原理に基づいた行動に切り替わってしまうかもしれない。荷物を持ち上げるときに「ちょっと手伝ってくれませんか」と頼むのと「300円あげるから手伝ってよ」と頼む場合の、相手の受ける印象はずいぶんと異なる、という行動経済学の話が頭に浮かぶ。チャリティーの一つとしては面白いけど、スケブの有償化自体はあまり好ましくない未来かもしれない。
str 2011.05.17-23:26 Edit
日本は善意の行動を隠れてするのをよしとする風潮があるので難しい問題ですね。(これから変わるかもしれませんが…)
スケブの依頼をするのは相手に時間を使わせてしまうため頼みにくいですが、有名な作家になればなるほど、有償化すると気軽に頼んでしまいそうな気がします。
募金が集まりにくい長野栄村の地震等のチャリティ活動だったら、どうなるのだろう?